さて、以前の記事でお伝えしたとおり、USCPAを保有している場合は、ACCAの試験科目全13科目（倫理も入れると14科目）のうち８科目が免除になりますが、その逆はどうかについてお伝えしたいと思います。
＜参考：USCPAホルダーのACCA免除科目一覧＞
まず、ACCAから直接USCPAを直接承認してもらう、というのは現状行われておりません。
次に思いつくのが、MRA＝相互認証（MUTUAL RECOGNITION AGREEMENT）の活用です。
これは、オーストラリアやニュージーランドといったコモンウェルスの国々に見られるパターンなのですが、
①それそれの国のCPAライセンスと、USCPAの相互認証
②それそれの国のCPAライセンスと、ACCAの相互認証
が認められているためこの２つを組みあわせて活用するという方法です。
具体的には、ACCAからオーストラリアもしくはニュージーランドのCPAを一旦取得して、その後、USCPAを取得する流れが可能（逆にUSCPAからオーストラリアもしくはニュージーランドのCPAを一旦取得して、その後ACCAを無試験で取得する流れが可能）なように見えてしまいますが、実はこれは現状認められていないんです。
これもきちんと調べればすぐに分かることなのですが、折角の機会なので少し詳しくみていきましょう。ここまで解説している日本語の記事はないと思います（調べてみた限り、当記事が初だと思います）。
まずはACCAからオーストラリアのCPAになれるのかどうかについて。結論から言うと、これはなれます（ただし、相互認証を使ってACCAを取得した場合を除くとされています）。
オーストラリアのCPA協会によるACCA保有者がオーストラリアのCPAになるための前提条件
ACCAの現在良好な会員であり、職業的行為の侵害に関する捜査を受けていない
別の相互承認協定（MRA）、その他の同様の経路協定、または特別な会員経路を通じてACCA会員資格を取得していない
すべての ACCA 試験と実務経験要件 (PER) を正常に完了していること
ACCAのメンバーシップを少なくとも5年連続で維持している
少なくともオーストラリアの学士レベルに匹敵すると公認会計士オーストラリアによって認められた大学の学位を保持していること。
となっています。
次に、ACCAからニュージーランドのCPAになれるのかどうかについてみてみましょう。結論から言うと、これもなれます（こちらも相互認証を使ってACCAを取得した場合を除くとされています）。。
ニュージーランドのCPA協会によるACCA保有者がニュージーランドのCPA（CA ANZ メンバーシップ）になるための前提条件
ACCA メンバーは、CA ANZ メンバーシップを申請する前に、次の基準を満たしている必要があります。
現在オーストラリアまたはニュージーランドに居住している
現在良好な状態の正会員であること
ACCA会員への入会後、少なくとも5年の経験を積んでいる
gained their membership through the standard examination pathway (not through a third-party arrangement) ≒ 試験合格を通じて（第三者の取り決めを通じてではなく）メンバーシップを獲得した
となっています。
これはUSCPAでも結論は同様で、USCPAからオーストラリア／ニュージーランドのCPAに相互認証を使ってなることは可能です。全米州政府会計委員会 (NASBA)/米国公認会計士協会 (AICPA) とCPAオーストラリアとの間で相互承認協定(MRA)が締結されているからです。
この協定に基づき、USCPAホルダーは、MRAの付録に詳述されている資格要件を満たしていれば、オーストラリアとニュージーランドで監査権を取得するための経路である公認会計士オーストラリア資格を取得する資格を得ることができる。同様に、オーストラリア公認会計士資格保持者（オーストラリアまたはニュージーランドの国民または合法的居住者）は、MRA の付録に記載されている資格要件を満たしていれば、米国公認会計士資格を取得する資格があるとされています。
ここまでご覧いただいた方で勘が良い方はお気づきかと思いますが、どちらの協会も「正規試験に合格して取得したACCAしか認めない（＝相互認証で取得したACCAは認めない）」としているわけで、さらに相互認証制度の中をきちんと読むと「相互認証制度 に記載されている資格要件を満たしていれば」という表現があり、ここがポイントになるわけです。
これをUSCPA側や、ACCA側から見るとどうなるか、というのが今回の記事の最大のポイントになりますが、結論から言えば、オーストラリア／ニュージーランドのCPA試験を受けてオーストラリア／ニュージーランドのCPAを取得していない場合は、相互認証（オーストラリア／ニュージーランドCPA ⇒ USCPA）が認められていません。
ということで、MRAの付録（Appendix）のポイント抜粋を日本語（個人による翻訳ですのでご了承ください）で確認してみましょう。
①オーストラリアのCPAが相互認証を使ってUSCPAを取得する場合
オーストラリア公認会計士は、以下の場合、この協定により米国公認会計士資格を取得することができる。
オーストラリアまたはニュージーランドの市民、またはオーストラリアまたはニュージーランドの合法的な居住を許可するビザの保持者である。
オーストラリアまたはニュージーランドに合法的に居住することを許可するビザの保持者であり、CPAオーストラリアの優良会員である。
以下の各項目および適用される米国司法省の法律および州委員会に規定される追加基準を満たすこと。
1) 学歴の基準
州理事会が認める大学またはカレッジが授与するバカロレア以上の学位など、少なくとも150単位（semester hour）以上の大学またはカレッジでの教育が必要である。
2）試験基準
To meet the examination criteria of the eligibility requirements of this agreement, Australian CPAs must have passed CPA Australia’s CPA Program, which comprises the following subjects:
この協定の資格要件の試験基準を満たすには、オーストラリア人CPAホルダーは、以下の科目から構成されているCPAプログラムに合格していなければなりません。
Two elective subjects from the following list of subjects:
o Financial Planning Fundamentals
o Advanced Taxation
o Advanced Audit and Assurance
o Financial Risk Management
o Contemporary Business Issues
o Superannuation and Retirement Planning.
• Ethics and Governance;a
• Strategic Management Accounting;
• Financial Reporting; and
• Global Strategy and Leadership, which is the capstone subject to be completed as
final subject of the CPA Program.
そして、最後には除外事項として以下の内容で強調がされています。
Exclusions:
Australian CPAs who obtained their Australian credential by qualifying under a reciprocal
agreement that CPA Australia may have with another professional accountancy organization are not eligible under this agreement. This includes all mutual recognition agreements, reciprocal membership agreements, and other similar agreements which CPA Australia may have or have had at any time.
除外事項：他の職業会計士組織と締結している相互協定に基づきオーストラリアCPA資格を取得したものは、この協定に基づく資格を有しません。これにはCPAオーストラリアが有する、または有していたすべての相互承認協定、相互メンバーシップ協定、およびその他の類似協定が含まれます。
つまり、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれかの国できちんと試験を受けて合格しないと、これらの国の間での相互認証は認めれていないということです。したがって、ACCA（イギリス）⇒オーストラリア／ニュージーランド⇒アメリカ（USCPA）を無試験で成し遂げるのは認められていないということになります。
では、折角なので逆ルートについても見てみましょう。
この場合は、アメリカ（USCPA）⇒オーストラリア／ニュージーランド⇒ACCA（イギリス）という流れです。
さきほどアメリカ（USCPA）⇒オーストラリア／ニュージーランドの流れについては相互認証が認められていることが確認できましたが、それではACCA側について見てみます。
ACCAに対するアプリケーションフォームを見ると以下のような記載になっています。
Application for direct admission to membership
If you are a current member in good standing of Chartered Accountants Australia and New Zealand (CA ANZ) you may be eligible to apply for membership of ACCA.
Membership regulation 3(d)(v) states that an individual shall be eligible for membership of ACCA if he/she:
i is a member of Chartered Accountants Australia and New Zealand having met Chartered Accountants Australia and New Zealand’s professional education/examinations and practical experience requirements and has;
ii attained at least five years’ experience post admittance to membership; and
iii undertaken continuing professional development as required by Chartered Accountants Australia and New Zealand under its regulations, providing such regulations are consistent with International Education Standard 7, Continuing Professional
Development, issued by the International Accounting Education Standards Board; and
iv been able to evidence a contribution to business or the profession, with two referees providing written confirmation of their
standing.
In addition to the criteria specified in (i) to (iv) above, as the case may be, satisfies the Admissions and Licensing Committee as to his general character and suitability and any other prescribed terms in accordance with the reciprocal membership agreement.
Admission as a member under the RMA does not provide an applicant with the right to engage in public practice. Applicants who are engaged in public practice as a sole practitioner, partner or director of a firm which undertakes public practice, are required to hold an ACCA practising certificate and must therefore submit a practising certificate application form. A copy of the form can be downloaded from ACCA’s website at www.accaglobal.com/practising
こちらは米国や豪州のように、相互認証で取得した豪州ライセンスは認めないとはっきりとは書かれていないのですが、上記赤字部分を総合的に考えますと、極めて厳しいと言わざるを得ない（実質的に無理）と考えます。
だからこそ、USCPAからACCAへの道については８科目の免除があるともいえるのだと思います（要は、抜け道は認めないというだけの話）。
いかがでしたでしょうか？
折角なら、ACCAとUSCPAの両方を持ちたい！という方も中にはいらっしゃると思いますが、無試験で両方というのは現状なさそうに思います。
一方でシンガポールのCA（Certified Accountant）とACCAは互換性がありますので、名刺やLinkedinに両方の資格を記載している方も自然にいらっしゃいます。
また、実務をしていると、ACCAとUSCPAの両方を保持されている方もまれに見かけます（外国の方でですが）。
また、日本の公認会計士とUSCPAの両方をお持ちの方はそれなりの数がいらっしゃると思います（ちなみに日本の会計士とACCAの両方をお持ちの方は、極めて少数だと思います）。
実務において２つ以上の会計士資格が必要か？という観点でいえば、従事する仕事の内容次第と言えますが、一般的には１つあれば十分と思います（ただし、日本で働く場合は日本のCPA資格がないと厳しいですし、海外でも法定書類にサインしようと思ったら、当該国の会計士資格が必要になります）。
それよりもCFAやアクチュアリー、証券アナリストといった相乗効果の高い試験を狙っていく方が良さそうに思います。ただし、このあたりは個人のキャリアや価値観によるところも大きいので一概には申し上げられません。
ということで、今回は楽して（無試験）でUSCPAとACCAホルダーになる方法を追求してみました。ご参考になれば幸いです。
それでは！
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