プロの会計士の資格を得る(ACCA メンバーになる)ためには、USCPAと同様に試験合格だけでなく、倫理およびプロフェッショナルスキルモジュールを完了し、PER を完了する(実務経験とスキルを証明する)必要があります。
これらをすべて完了するまでメンバーシップを申請することはできません(実際には申請自体はできますが、内容を精査され、不十分と判断された場合はDeclineされます)。
というわけで、今回は、意外と見落としがちな、ACCA の実務経験要件 (PER) について触れていきたいと思います。
まず先にざっくり全体像を申し上げますと、PER を完了するには、最低36 か月の会計または財務の実務経験を積む必要があり、この期間中に、9 つのパフォーマンス目標 (5 つの必須目標と 4 つの技術目標すべて) を満たす必要があります。
手続きとしては、ACCAのMyExperience ページ内でオンラインで進捗状況を記録し 、実務経験の監督者から PER の承認を受けるという流れになります。
1.36か月の実務経験
PER を完了するには、関連する会計または財務の役割で 36 か月の監督下での経験を完了する必要があります。
(1)求められる経験・役割
理想的には、会計、財務、監査、保証、税務などの関連分野の仕事に就いていることが求められます。これらは、ACCA に登録する前、試験勉強中、または試験終了後に経験を積むことでOKです。ただし、経験を積んだ雇用主の実務上の監督者からこの経験を承認してもらう必要があり、日本人の場合は、これが結構面倒だったりします。
(2)働く場所の制約
基本的にはあらゆる部門や組織での経験が対象となっています。ACCA 認定の雇用主というものが存在しますが、特にこだわる必要はありません(後述しています)。
経験は、単一の役割や連続した期間で積む必要はなく、さまざまな役割やさまざまな雇用主で経験を積むことができます。クラブ、慈善団体、団体などでボランティア活動をして経験を積むこともできます(イギリスらしいですね♪)。
重要なのは、PER を満たすのに役立つ機会を探し、関連する役割で合計 36 か月の経験を積むことです。また、承認されることを考えると、仕事が適切に監督されていることも重要になります。
(3)パートタイマー
パートタイムで働いたり、会計や財務の一部のみを含む役割で働いたりして経験を積むことも認められています。
雇用の詳細を記録する際に、勤務時間数や会計または財務関連タスクに費やした時間の割合など、自分の役割に関する詳細を入力すれば、あとはこのツールが36 か月の要件にカウントできる時間を計算します。
たとえば、会計や財務のタスクに作業時間の 50% しか費やしていない場合でも、この経験を PER に活かすことができます(計算され、割合の分だけ時間の増加が遅くなります)。したがって、この例では、12 か月の期間で 6 か月分の PER が得られます。
(4)休職期間
仕事を長期間休んでいるが、将来のある時点で復帰する予定である場合(たとえば、産休、親戚の世話のための休暇、長期の病気)は、この期間を 36 か月にカウントすることはできません。
(5)会計または財務の役割に就いていない場合
関連する会計または財務の役割に就いていない場合でも、MyExperience を更新して雇用の詳細を記録する必要があります。ACCAによれば、この役割に費やした時間は、36 か月の関連経験にはカウントされませんが、適切な資格を持つ担当者によって作業が監督されている場合は、この役割で働きながら次のパフォーマンス目標を達成できる可能性があるとのことです。
3.パフォーマンス目標(Performance objectinves)
PERの一部として、合計 9 つのパフォーマンス目標を達成する必要があります。
パフォーマンス目標と試験は密接に関連付けられています。
これは、学習を通じて培った知識が、職場で使用するスキルやテクニックにも関連していることを意味しています。
9つの内訳としては、Essentials の 5 つの目標および 17 のテクニカル目標から任意の 4 つです。
実務経験がそれぞれのパフォーマンス目標に関連することを200-500文字の声明文(ステートメント)としてまとめ、実務経験の監督者に承認してもらうのです。
(1)Essentials – 必須
これらはすべてのプロの会計士に必要な必須かつ基本的なビジネス スキルであるため、5 つすべてを達成する必要があります。
倫理とプロフェッショナリズム
ステークホルダー関係の管理
戦略とイノベーション
ガバナンス、リスク、コントロール
リーダーシップとマネジメント
(2)テクニカル – 17 から 4 つを選択
17 の技術パフォーマンス目標から選択でき、それらはさまざまな技術分野に分類されます。これらの目標のうち 4 つを選択して完了することができます。
企業および事業報告
トランザクションとイベントの記録・処理
外部財務報告書の作成
財務報告書の分析と解釈
財務管理
投資と融資の決定・評価
運転資本の管理と制御
財務リスクの特定と管理
管理会計
管理会計制度の評価
パフォーマンスの計画と管理
パフォーマンス監視
課税
税金の計算と査定
税務コンプライアンスと検証
税金計画とアドバイス
監査と保証
監査と保証のプロセスの準備と計画
監査または保証業務のための証拠収集および評価
監査または保証業務の結果レビューと報告
アドバイザリーとコンサルティング
ビジネスアドバイザリー
データ、デジタル、テクノロジー
データ分析と意思決定のサポート
(3)日々の仕事に関係する目標を選択する
上記のとおり4 つの技術目標を選択する必要がありますが、自分の役割に合った技術目標を選択するのが最善であるとACCAはアドバイスしています。日々の仕事に最も密接に関係する目標に焦点を当てると、パフォーマンス目標を達成するのが簡単になるためです。
例えば、特定の監査または税務の役割に就いていない場合、これらの目的を達成するために適切なレベルの経験を積むことはできません。
(4)パフォーマンス目標の構成について
パフォーマンス目標には 3 つの部分があります。
①説明- 目的の概要
②要素- 各目標には、目標を達成するために実証する必要があるタスク、スキル、行動の概要を示す 5 つの要素があります。
③ステートメント- 自分の仕事の例を示して目的の達成を実証する 200 ~ 500 ワードのステートメントを作成する必要があります。
パフォーマンス目標を達成するには、5 つの要素をすべて満たす形でステートメントを作成する必要があります。最終的にこのステートメントは承認を得るために実務経験の監督者(実務経験者指導員、Practical experience supervisors)に提出する必要があります。
4.実務経験者指導員(Practical experience supervisors)
PERに関しては実務経験のあるスーパーバイザーが重要な役割を果たします。
スーパーバイザーは経験を監督するだけでなく、準備したステートメントを承認する責任も担います。
実務経験スーパーバイザーは、職場での成長をサポートし、仕事での進歩とパフォーマンスを評価する個人と定義されています。要は上司であったり、資格をもった同僚(アドバイスできる立場の人間が望ましい)ということになります。
特に上司やスーパーバイザーは本人が実務経験の要件を満たしているかどうかを確認する責任があるため、本人をサポートできる知識と経験を持っていることが重要です。そのため、これを行うための専門知識を持っていることが不可欠です。現実的には、ほとんどの場合、実務経験のある上司は、ラインマネージャー、または特定のプロジェクトや活動に関して報告する人になります。
より具体的には、会計士の資格*を持っており、本人と密接に関連があり、本人の仕事をよく知っている人、ということになります。
* 資格のある会計士とは、 IFAC (国際会計士連盟) の会員団体および/またはその国の法律で認められた団体の会員です。
ラインマネージャーが資格を持っていない場合でも、関連する役割で本人の経験時間を承認することができますが、目標を承認するには資格のあるスーパーバイザーを指名する必要があります。このスーパーバイザーは、組織内の別のマネージャーやコンサルタント、またはラインマネージャーと協力して本人の経験を検証する組織の外部会計士または監査人であってもOKです(したがって、パフォーマンス目標によっては複数の異なるスーパーバイザーを設定することも認めらています)。
一方で、潜在的な利益相反を避けるために、可能であれば、実務経験の監督者として、友人や親戚(家族)を設定しないことが求められています(それが不可能な場合は、ACCA入会申請時に ACCA との関係を明らかにする必要があると言われています)。
5.ACCAに承認された雇用主のもとで働く
ゴールドまたはプラチナレベルの訓練生育成承認を取得しているACCAに承認された雇用主で働いている場合、業績目標の免除を申請できる場合があります(しかし、日本人でUK企業で働いている方以外はほぼ該当しないと思われます)。
雇用主がこのレベルの承認を得ているかどうかは、ACCA の承認済み雇用主ディレクトリ(https://www.accaglobal.com/gb/en/help/approved-employer.html)で検索できます。
この免除が存在するのは、一部の雇用主が研修プログラムを実施しており、研修生が PER を完了するために必要なサポートを提供していることを ACCA が認識しているためです。いずれにしましても雇用主がこのレベルの承認を得ているかどうか、また、業績目標の免除申請を許可するかどうかを確認することが重要です。
日本からの受験の場合、このケースに該当する方は稀だと思われますし、UKからの受験の場合はご自身でACCAに確認いただくのが良いと思いますので、ここではこれ以上は触れないでおきます。
いかがでしたでしょうか?
プロのACCAとして活躍にするには上記のような実務経験が必要になりますが、日本では試験合格自体でも十分に雇用主に評価されることと思います。
ただ、折角試験に合格したなら、ACCAメンバーとして活躍したいですよね?
ぜひ36か月の関連業務に従事しPERを満たすプロを目指してみてください!
本ページはACCAのホームページに掲載された情報に基づいて記載しております。申請にあたっては必ずご自身で最新の情報を確認してから行ってください。より詳細を知りたい方も下記URLで最新情報をご確認ください。
URL⇒https://www.accaglobal.com/gb/en/student/practical-experience-per.html
それでは!
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